アイススレッジホッケーは、アイスホッケーと同じリンクで、ほとんど同じルールで行われるスポーツです。違いは、スケート靴の替わりに、2つの刃をつけたソリに乗るところ、スティックを2本使うところなどですが、体当たりなどゲームの厳しさは、アイスホッケーと同じです。
約30年前、北欧で始まり、やがて世界に広がりました。1994年のリレハンメル冬季パラリンピックの正式競技にとりいれられました。1998年に日本で開催された冬季長野パラリンピック世界大会より、日本チームも参加しました。
- リンク
上のイラストは、アイススレッジホッケーのリンクです。おおよそ、長さ60m、幅が30mあります。
- 選手
6人対6人で戦います。交代は随時可能で、体力の消耗も激しく、集中力のある、1~2分のうちに、何度も交代します。
6人とは、FW(フォワード)3人、DF(ディフェンス)2人、GK(ゴールキーパー)1人です。
- ゲーム
ゲームは、リンクの真ん中のセンターアイススポットで、レフェリーの落としたパック(円盤)を両チームが奪い合うフェイスオフから始まります。選手はスティックを使ってパスしたり、シュートを打ったりして、相手のチームのゴールにパックをいれようとします。パックが相手のゴールラインを超えると1点が入ります。
ゲームの中に反則があった時はレフェリーは笛(ホイッスル)を吹き、ゲームを止めます。そして再びフェイスオフによってゲームが始まります。15分間のピリオドを休み時間をはさんで3回行ってゲーム終了ですが、同点のときは、サッカーのPKのようなシュートの打ち合いで勝ちを決めます。
アイススレッジホッケー競技規則(IPCハンドブック抜粋)
- 参加資格
1.1
IPC(国際パラリンピック委員会)公式競技大会及び公認大会に出場するには、参加チームの各プレーヤーは、通常のアイスホッケーの試合に出場できない永久的な障害を持つ選手でなければならない。最低限の障害の決定は、公認冬季競技クラス分け委員により行われる。
1.2
最低障害
切断 - 足関節から
麻痺 - 両足
関節可動性 - 足首関節強直(癒着)
伸展最低30度以下膝関節強直
CP/頭脳 - CP7クラスに相当する痙性痙直
脚短縮 - 最低7センチ
- チーム構成
2.1
2名のゴールキーパーを含む最大15名のプレーヤーが、公式ゲームシートに記載されるチームとしてみなされる。しかし、1試合につき12名の選手のみ、ユニフォームを着用(ベンチ入り)するものとする。
2.2
アイススレッジホッケーレフリーは、アイスホッケー国際連盟より資格認定された者で、IPC規則に沿ったスレッジホッケーゲーム経験のある者でなければならない。IPCスレッジホッケー委員会に資格認定証を提出し、IPC技術代表(TD)に承認されなければならない。
- リンク
3.1
リンクは、通常のアイスホッケーで使用する(60m×30m)リンクを使用するが、ベンチとペナルティーボックス前のフェンスは、選手がスレッジに乗ったまま試合が見られるよう透明なフェンスボードになっていなければならない。
3.2
ベンチとペナルティーボックスは、表面と同じ高さにし、内部は氷で覆うか、スレッジにのったまま移動できるようアクリル板等を敷き、コーチやその他のサポーターの手を借りずに出入りできるようにする。
- 用具
4.1 スレッジ
スレッジはエッジ(スケートの刃)が付いたパイプフレームで構成されており、氷上から本体までの高さは、8.5~9.5cmであること、パイプフレームは直径xxcmを超えないこと、エッジの長さはスレッジ本体の長さの3分の1を超えないこととなっている。通常スレッジには、バックレストが取付けられるが、選手の脇の下を超え横に突き出してはならない。シートクッションを使用する場合は、クッションの高さは10cmを超えてはならず、スレッジに乗った際、ベルトで脚・足首・膝・腰を固定しなければならない。
4.2 スティック
選手の使用するスティックは、全長が75cm以内、ブレードの部分が高さ5mm以内、長さが25cm以内、カーブは1.27cm以内で、木材・プラスチック・アルミ・チタン等で作られている事となっている。また、スティックの端につけるピックの歯は、4mm以内以下で最低6個の歯を付け、鋼鉄を含み堅固な素材でもよいが、スティックの幅より広かったり、長さが10.2cmを超えてはならない。
ゴールキーパーが使用するスティックは、全長が75cm以内、ブレードの部分が高さ11cm以内、長さが35cm以内、カーブが1.27cm以内となっている。また、ブレードの端に通常のピックサイズの1cm以内の追加ピックを付けてもよい。
4.3 防具
選手は、フルフェイスマスク付きのヘルメットと、喉を保護するカラーの用具が義務付けされている。また、全アイススレッジホッケー選手は、通常のアイスホッケー選手が使用する防具(ヘルメット・ショルダーパッド・エルボー・パンツ・レガース・グローブ等)着用し安全保護の装置をしなければならない。
- 競技時間
アイススレッジホッケーの競技時間は、各ピリオド(3ピリオド)正味15分、インターバル10分間で、第3ピリオド終了時点で同点の場合、正味10分間の延長戦を行い、先に得点を挙げたチームが勝者となり終了となる。(サドンビクトリー)
延長戦でも決着がつかない場合は、国際アイスホッケー連盟(IIHF)規則にあるとおりシュートアウトにより決定する。
- ポジションの名称と役割
①ゴールキーパー(GK)
GKは、最後の防御ラインといてゴールの前に立つ重要なポジションであり、その調子によって直接勝敗に影響する。GKに必要なのは、身体が柔軟、反射神経が鋭い、冷静沈着、リーダーシップなどが挙げられるが、技術的なスケーティング・スティッククリアー・キャッチングはもちろんのこと、ゲームの流れが見えるポジションなので、他のプレーヤーに適切な指示を与えなければならない。
②ディフェンス(ライトディフェンスRD・レフトディフェンスLD)
DFは、防御だけをやるポジションではなく、攻撃のスタートでもある。体を張ったしつこいボディチェック、FWとの連携、正確な状況判断等が要求される。
③センターフォアード(CF)
CFは、ウイングとディフェンスのつなぎ役で、攻守ともに重要なポジションである。攻撃はウイングを上手く使い、防御では、DFのフォローするなど、オールラウンドの技術が要求される。
④ウイング(ライトウイングRW ・レフトウイングLW)
ウイングは、ゴールゲッターであるが、攻守が入れ替わると素早いフォアチェックにいかなくてはいけない。ウイングのスピードは、相手DFの脅威となるはずで、スピード・シュート力・キープ力が要求される。
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7.1 罰則(ペナルティー)
①マイナーペナルティー(2分間退場)
GK以外の競技者は2分間退場し、その退場中に得点されると出場が認められ、GKがペナルティーを科された場合は、他のプレーヤーを替わりに退場させる。
②ベンチマイナーペナルティー(2分間退場)
ベンチにいるプレイヤーや競技役員が、レフリーの判定に抗議して、スティックや他の物でボードや氷の氷面を叩いた場合。
③メジャーペナルティー(5分間退場)
GK以外の競技者は5分間退場し、その退場中に得点されても5分経過するまで出場が認められない。このペナルティーは悪質であったり、相手を負傷させたりした場合にレフリーの判断で科せられ、同一試合に2度メジャーペナルティーを科せられると、残り時間退場を命じられロッカールームに引上げなくてはならない。この場合、他のプレーヤーを替わりに5分間退場させる。
④ミスコンダクトペナルティー(10分間退場)
レフリーに対する暴言や、スティックなどの投げつけ行為は、10分間の退場(ロッカールームに引上げる)となり、替わりのプレーヤーが直ちに出場できる。同一試合に2度犯したとき、または、レフェリーの制止に従わない場合は、ゲームミスコンダクトを科され残り時間退場となる。
⑤マッチペナルティー
最も悪質と判断された場合、残りの時間の退場を停止されロッカールームに入るよう命じられる。替わりのプレーヤーは、試合再開5分後に出場できる。ゲームミスコンダクトを科されたのにベンチを離れることを拒否したり、マッチペナルティーを科された場合、関係連盟(懲罰委員会)の処罰が決まるまで試合出場停止となる。(例:1年間試合出場停止)
⑥ペナルティーショット
GKを除く守備側のプレーヤーが、ゴールクリーズ内でパックを体を使って隠したり、パックを手で拾い上げたりした場合。また、攻撃側プレーヤーと相手ゴールとの間に敵プレーヤーがいなくて得点可能なとき、守備側のプレーヤーが故意に後ろからの反則でチャンスを妨害したときは、レフェリーの判断でペナルティーショットとなり、指名された攻撃側プレーヤーが、センターラインのスポットからドリブルし敵ゴールにショットする。
GKは、シュートを止めるために腹ばいの姿勢のみとることができるが、スレッジの側面を氷上に横にして、シュートを止めることは許されない。この場合もペナルティーショットとなる。
7.2 罰則(ペナルティー)の種類
次のような行為はペナルティーとなり、レフェリーの判断でそれぞれマイナーペナルティーからマッチペナルティーが科される。
・規定外のスティックを使用した場合
・審判の判定に対して執拗に抗議した場合
・ゴールクリーズ内にパックが無いとき、GKに対する妨害行為
・スレッジの全面で相手に突進した場合(チャージング)
・両方のスティックを高く上げてチェックに行った場合(クロスチェッキング)
・肘を使っての妨害行為(エルボーイング)
・手やスティックで相手の体やスレッジを押さえた場合(ホールディング)
・スティックで相手を叩いたりした場合(スラッシング)
・スティックのブレードの部分で相手を引っかけた場合(フッキング)
・スティック・腕・手・肘で相手をつまずかせる行為(トリッピング)
・肩よりスティックを上げて相手を叩いたりする行為(ハイスティック)
・パックを持っていない相手に対する妨害行為(インターフェアランス)
・GK以外の選手が、故意にパックの上に倒れたり、隠したりする行為(フォリングオンザパック)
・相手を激しくフェンスに叩きつける行為(ボーディング)
・ゴールを故意に動かす行為
・スティックのブレードの先で相手を突こうとする行為(スペアリング)
・スティックの柄やピックで相手を突こうとする行為(バットエンディング)
・殴り合いのケンカになった場合(ラッフィング)
・パックやパックを保有する相手にスティックを投げつける行為
7.3 ペナルティーにならない違反行為
①高く浮いたパックを叩きにいって、肩よりスティックが上がってパックに触れた場合(ハイスティック、近くのフェイスオフスポットからフェイスオフ)
②パックを直接手で動かしたり、故意にピックを使いパックを動かすことは違反である。(近くのフェイスオフスポットからフェイスオフ)ただし、スティックの一部がパックに接触している限り、親指や人差し指でパックをキープすることは許される。
- オフサイド
①オフサイド
攻撃のプレーヤーがパックより先にブルーラインを越えるとオフサイドとなり、ブルーライン近くのフェイスオフスポットでフェイスオフされる。パックと体のどちらか先に越えたかの判断は、スレートの両エッジ(刃)で、スティックやスレッジの前面がブルーラインを超えても両エッジが残っていればオフサイドにはならない。
②センターラインパス(ツーラインパス)
攻撃側のプレーヤーがディフェンスゾーンからセンターラインを超えている見方プレーヤーにパスが渡った場合、センターラインパスとなりパスの出された近くでフェイスオフされる。ただし、パックに触れなければ続行される。
- アイシング
センターライン手前の自陣側から出たパックが、誰にも触れずに相手側のゴールラインを越えるとアイシングとなり、パックが出た側のフェイスオフスポットでフェイスオフされる。ただし、次のようなときはアイシングとならない。
・ペナルティーによって相手チームよりプレーヤーが少ない場合。
・パックがゴールクリーズを通り抜けた場合。
・パックがゴールラインを超える前に、相手プレーヤーが明らかに触れることができると判断された場合。